プラットホーム依存は危険。自社ECサイトを持つべき理由
投稿日:2019.11.17
最終更新日:2019.12.19
ECに携わる仕事をしていると、クライアントから早かれ遅かれ必ず相談のあることに「自社ECサイト」が挙げられます。
「今モール中心で売ってるんだけど、やっぱり自社サイトも持つべきでしょうか?」という具合ですね。
結論から言えば、「順番は後でも構わないですが、必ず持っておきましょう」と話すようにしています。
今回は、その理由の一つをプラットホームに依存することのリスクの面からお話をしたいと思います。
プラットホーム依存は危険。いつでも退場の危険性
前述しましたが、自社ECを持つべき理由として、「特定のプラットホームに依存した売上に偏ると怖い」というのがまず挙げられます。
プラットホームとは、ECで言えば例えば楽天市場やAmazon、Yahooショッピングなどの大手モールになります。
これらは、モールという大きな単位で覇権を争っており、それぞれが抱える個々のショップはその覇権争いの一つの駒・ツールでしかありません。
もちろん、その構成要素である各店舗の成長の上にプラットホームの勝ちはあるのですが、プラットホームが勝つためなら、ある程度の出店条件や規約は簡単に変更してきます。
規約変更の歴史
昔で言えば、楽天市場が固定出店料での出店契約からロイヤリティを導入した時、最近で言えば楽天市場が送料無料ライン一律化を宣言したり、楽天ペイの強制導入によりクレジットカード決済の導入が必須になったことなどが代表例です。
あ、楽天の商品メイン画像の文字入れ20%制限などもありましたね。
楽天ばかりじゃん、という気もしますが・・・・(笑)
詳しくは↓でも触れています。
Yahooでも2013年のEコマース革命宣言により固定出店料がゼロになったことも、逆の意味ではプラットホームの独断ですよね。
固定費が下がって、損益分岐点が下がった一方、ライバル店舗が一斉出店したことや、激安ショップが増えたことで結果的にはプラスにならないケースもあったかと思います。
また、個人の経験から言えば、Amazonでのメイン画像の白抜きが漏れておりいきなりアカウント停止を食らった苦い経験もあります。
ECからは外れたところでも、YouTubeの規約違反ということでアカウントをBANされたユーチューバーなども数知れません。
何が言いたいかというと、これらのプラットホームは、全体優先かつ個別は切り捨てることを恐れていないため、一瞬で退場させられる危険を持っているということです。
今後もECに関しては、モール間の争いは更に激化する見込みですので、各社の規約は大きく変化していくでしょう。
そのたびに振り回され、疲弊するのはヒト・モノ・カネといった有形リソースの不足している中小企業です。
自社ECサイトを持つべき理由
特定プラットホームに依存するのは危険ということはご理解いただけたと思いますが、その点に置いて自社ECサイトはリスクが少ないと言えるでしょう。
サイト上の画像やテキストの表現面や、決済方法などは一切制限はなく、自由に店舗や世界観を表現できます。
商品価格の面でも、モールほど容易に比較はされないため、サイトの中で買ってもらえる仕組みを作れば価格競争にも巻き込まれにくいとも言えます。
モールの意向により膨大な作業が発生することもなければ、戦略を揺るがすようなロイヤリティや料金負担に怯える必要もありません。
自社ECサイトの欠点・デメリット
とはいえ、自社ECサイトにもある程度の欠点やデメリットもあります。
軽く挙げれば、
- 法的なリスク
- ファン・リピータの育成コスト
- 集客コスト
などが代表的なものでしょうか。
法的なリスク
今回のプラットホーム依存のデメリットの裏返しとなりますが、モールでは法的なリスクを軽減するため、ある程度のチェック機能を持っています。
例えば、価格表記については景表法という法律に規定されており、二重価格の仕方によっては有利誤認や優良誤認といった、法的にアウトなケースも起きやすいのがECサイトです。
楽天では、過去に起きたスーパーSALEでの二重価格詐欺の件により、モール全体の信頼を損ねてしまったことから、システム的に二重価格のチェックが導入されました。
故意でなかったとしても認識の甘さで景表法は侵してしまうリスクはあります。
それを防いでくれる仕組みというのは、ある意味ではモールのメリットであり、自社ECでのデメリットになりえます。
同じく、特定商取引法などがECサイトは関係してきますが、この表記に関するリスクも自社ECサイトはすべて自社で負う必要もあります。
ファン・リピータの育成コスト
モール全体や、更に他のサービスでも使い回せるポイント制度など、モールにはそこで買い物をさせる動機となる制度があります。
その点、自社ECサイトはポイントシステムがあってもその店舗だけになりますし、なによりポイントをばらまくモール企画のような派手な施策は打つことが難しいです。
ネットショップという、「どこで買ったか」ということが重視されにくいシステムである以上、ファンやリピータを育成する難しさは、モール以上かもしれません。
集客コスト
最後に集客についてです。実はこれが一番問題とも言えるでしょう。
大手モールは、そのモール自体に集客力や認知度があり、その恩恵を個々の店舗も受けているのは間違いのないことです。
また、あまり認識していないECサイト運営者もいますが、モールも外部(googleなどの検索エンジンや、各WEB媒体へのディスプレイ広告枠など)に大きく資金を投じて、モールに人を集める施策をしています。
その面で、集客コストを肩代わりしてもらってるとも言えます。
自社サイトは、一部のロイヤリティ制のカートシステムを除き、そういった集客サービスはほとんどありません。
つまり、人を集めるコストは全部自社で負担する必要があり、集客無い所に絶対に注文が来ることはありえないのです。
これは大きなデメリットですよね。
まとめ
ここまで、プラットホームに依存することのリスク、自社ECサイトを持つ理由、更に自社ECのデメリットまで大筋で説明をしました。
長短両面ありますがやはりECをやる以上は、自社ドメインで、自社ECサイトを運営することは長い目で見て必須だと思います。
各社、モールの仕組みに風見鶏のようについていくだけでもキツイ状況のなか、自社ECを推奨するのは無責任や理想論という指摘もないではありません。
しかし、特定のプラットホームに依存することで、いきなり売上がダウンしたり強制退場といったリスクがある以上、リスクヘッジの意味においても自社ECを持つということは重要な意味があります。
短期的ではなく、中長期的な目線でのショップ運営を考えてもらえるきっかけになれば嬉しいです。