はじめに:建設業における発注業務の重要性と効率化の壁
多くの建設会社様にとって、協力会社様や下請け企業様への発注業務は、現場を円滑に動かすための重要なスタートラインです。しかし、案件の数が増えれば増えるほど、それに比例して発注に伴う事務書類の作成や管理の負担は大きくなっていきます。
今回ご紹介するのは、すでに社内の業務管理ツールとして「Kintone(キントーン)」を導入し、業務のデジタル化を進められていた建設会社様の事例です。
ベースとなるデータは社内に揃っているものの、そこから先の発注プロセスにおいて「どうしても発生してしまう手作業」と「ランニングコスト」のバランスに悩まされていた同社。私たちがどのような対話を経て、どのような仕組みをご提案し、業務の改善につなげることができたのか。そのプロセスを丁寧にご紹介いたします。
【課題】デジタル化の中で見えてきた、日々の手作業とコストのバランス
こちらの企業様では、案件ごとの基本的な発注情報(工事内容や当初の金額など)は、すでにKintone上にある程度入力されている状態でした。社内の情報共有としては一歩進んだ状態にありましたが、いざ「下請け企業様へ正式に発注する」という段階になると、いくつかの手間とコストの課題が浮き彫りになっていました。
当時の業務フロー
書類を印刷して郵送する手間に比べれば、電子契約サービスの利用はペーパーレス化が進んでいると言えます。しかし、日々の業務の中でこれを何度も繰り返すとなると、どうしても以下のような課題が生じていました。
当時行われていた運用は、以下のような流れでした。
- Kintoneに登録されているデータを見ながら、担当者が都度Word等で発注書を作成する
- 作成した書類をPDF形式に変換する
- 電子契約サービス(クラウドサイン)にログインし、PDFをアップロードして先方へ送付する
「せっかくKintoneにデータがあるのだから、これをそのまま活かして、もっとスムーズかつ低コストに発注を完結させられないだろうか」という思いから、今回のプロジェクトがスタートしました。
【提案】既存のKintoneデータを活かし、最適な仕組みへと整える
この課題に対して私たちが意識したのは、新しいシステムをゼロから構築して多額の投資をしていただくことではありません。「すでに社内で活用されているKintoneのデータを主軸に置き、最小限の外部連携を組み合わせることで、最もシンプルでコストのかからない仕組みを作る」ということでした。
大がかりな開発を進める前に、まずは運用を支えるための「データの土台づくり」から一緒に進めていきました。
1. 表記揺れを解消する「下請け企業のマスタ化」
最初に取り組んだのは、発注先となる下請け企業様の情報整理です。これまでは、入力する担当者によって「株式会社〇〇」「〇〇(株)」「マルマル」といった表記の揺れが発生していました。
これらをすべて「下請け企業マスタ」として正しく登録し直し、Kintoneの画面上でプルダウンから正確に選択できる仕組みをご提案しました。これにより、宛先間違いなどのケアレスミスを防ぐ土台が整いました。
2. Kintoneの画面内に配置したシンプルな「発注ボタン」
Kintoneの発注情報管理画面(テーブル機能)の各行に、独自の「発注ボタン」を設置しました。
営業担当者が画面上で下請け企業を選び、金額を入力し、必要に応じて図面や仕様書などの添付ファイルをセットした状態から、ボタンをワンクリックするだけで次の処理へ進めるようにしました。
3. Google Cloud(Cloud Run)による自動メール送信
発注ボタンが押されると、Google Cloudの「Cloud Run」というクラウドサービスを経由して、対象の下請け企業様へ自動的に発注案内のメールが送信される仕組みを構築しました。
下請け企業様は、メールに記載された専用のURLをクリックするだけで、スマートフォンやPCのブラウザから発注内容(金額や添付ファイル)をすぐに確認できます。内容を確認し、問題がなければその画面上で「承諾」ボタンを押すだけで手続きが完了します。
4. スプレッドシートへの自動フィードバックとステータス更新
下請け企業様が「承諾」を押した日時や、接続環境の情報は、Googleスプレッドシートに自動的にログとして記録されるようにしました。同時に、Kintone内の該当データの発注状況も自動的に「承認済み」へと更新されます。
高額な電子契約サービスに頼り切るのではなく、企業間の合意の証跡として必要なログ(日時・環境)をGoogle Cloud側でしっかりと保持することで、安全性と低コストを両立させました。

【結果】営業担当者で完結するフローへ。追加のランニングコストは「ゼロ」
この新しい仕組みを導入したことで、社内の発注業務は非常にスマートな形へと生まれ変わりました。
- 営業担当者だけで業務が完結
ボタンひとつで発注から先方の承諾確認までが行えるようになったため、これまで事務員に個別で依頼していたプロセスが不要になりました。営業担当者が自身の操作だけで、その日のうちに発注業務を完結できるようになり、社内の工程削減につながりました。 - 手作業の削減とペーパーレスの維持
Wordの作成、PDF化、電子契約サービスへのログイン・アップロードという一連の手作業がすべて消滅しました。Kintoneの画面だけで作業が完結するため、担当者の心理的な負担も大きく軽減されています。 - 追加のランニングコストが「ゼロ」で運用可能に
これまでの従量課金型の電子契約サービスから、Google Cloudを中心とした自社専用のシンプルな仕組みへと移行しました。今回は、既存のKintoneの基本契約と、Google Cloudの「無料枠」の範囲内でシステムを構築・運用できたため、自動化による追加のランニングコストは一切かかっていません。発注件数が増えてもコストを気にせず運用できる、ストレスのない環境が整いました。
何かを無理に変えるのではなく、既存のツールと新しい技術を優しくつなぐことで、「ペーパーレス」「業務工数削減」「コスト削減」の3つが合わさった大きな改善を実現することができました。
【まとめ】既存の資産と無料枠を活かし、身の丈に合った自動化を
今回の事例のポイントは、すでに社内で定着していた「Kintone」という素晴らしい資産をベースにしながら、足りない機能をGoogle Cloudの無料枠などを活用して賢く補った点にあります。
すべてのシステムを自社専用に一から開発するとなると、莫大な費用と期間がかかってしまいます。しかし、今あるツールを活かし、適切なAPI連携を行うことで、追加のシステム維持費をかけずに、中小企業様にとっても無理のない「ちょうどいい自動化」を実現することが可能です。
このようなお悩みはございませんか?
- 社内でKintoneを使っているけれど、そこから先の外部とのやり取りで結局手作業が発生している
- ペーパーレス化を進めたいけれど、月々のランニングコスト(従量課金など)が気になっている
- 業務フローを少しだけシンプルにして、現場の負担を減らしたい
私たちは、Kintoneのデータを中心とした外部ツールとのAPI連携や、Google Cloudなどのクラウド基盤を活用した「低コストで無駄のない業務効率化」のお手伝いを得意としております。
「うちの業務でも同じようなことができるだろうか?」といった素朴な疑問でも構いません。自社の業務フローに合わせた最適な仕組みづくりにご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。お客様の業務に寄り添いながら、一歩ずつ丁寧に伴走させていただきます。