「あの見積もり、どこにあったっけ?」——見積もり書をエクセルやスプレッドシートで作っている中小企業なら、一度は経験があるのではないでしょうか。
実は、私たち自身もまったく同じ課題を抱えていました。本記事では、当社が自社の見積もり業務を効率化するために実際に開発し、日々運用している「見積もり管理システム」の内製事例をご紹介します。専用サーバーなし、月額費用も0円。中小企業でも無理なく取り組める、等身大のシステム開発のリアルな実例です。
これまでの課題|スプレッドシート管理の限界
見積もり書をエクセルやスプレッドシートで作っている企業は、今もとても多いのではないでしょうか。当社もまさにその一社で、もともとは見積もり書をスプレッドシートで作成していました。しかし業務が増えるにつれて、次のような課題が目立つようになってきました。
案件ごとにファイルが分かれ、情報が分散していた
見積もりは案件ごとのマスターシートで作成していたため、データが1件1件バラバラのファイルに散らばっている状態でした。案件が増えるほど情報が分散し、全体をまとめて見渡すことが難しくなっていました。
過去の見積もりを探すのに一苦労
「以前、似た案件でいくらで出したか」を確認したくても、複数のスプレッドシートを横断的に探し回る必要があり、地味に大きな手間になっていました。
見積もりの“状況”を統合的に把握できない
回答待ち・失注・受注といった、各見積もりのステータスを一元的に確認する仕組みがなく、フォローの抜け漏れも起こりがちでした。
「市販の販売管理ソフトは?」——既製品では、かゆいところに手が届かない
「それなら市販の販売管理ソフトを使えばいいのでは?」と思われるかもしれません。実際に検討もしましたが、既製の選択肢にはそれぞれ悩ましい点がありました。
PCインストール型の販売管理ソフト|場所とパソコンに縛られる
昔ながらのPCにインストールするタイプは、そのパソコンの前でしか作業ができません。外出先で見積もりを確認したり、複数人で気軽に共有したりするのが難しく、「どこでも使いたい」という今の働き方には合いませんでした。
クラウド型の販売管理アプリ|サブスク費用と情報管理の不安
一方、クラウド型のアプリはどこでも使えて便利ですが、毎月のサブスクリプション費用が積み重なっていきます。さらに、自社の見積もりや取引先といった大切な情報を外部サービスに預けることへの不安も残ります。
「エクセルやスプレッドシートでは情報が分散する」「市販ソフトはどれも帯に短し襷に長し」——この隙間を埋めてくれるのが、次にご紹介する“自社にちょうど合わせた内製”という選択肢でした。
解決策|Cloud Run+Firestoreで見積もり管理システムを内製
これらの課題を解決するため、当社では見積もり管理システムを自社開発しました。技術構成は、Google Cloudの Cloud Run(サーバーレス実行環境)+ Firestore(NoSQLデータベース) です。

社名などはサンプルですので実在しません

社名などはサンプルですので実在しません
専用のデータベースサーバーは不要。Firestoreで十分だった
Firestoreとは? Googleが提供する、クラウド上のデータベースサービスです。見積もりのデータを保存しておく“情報の入れ物”のようなもので、サーバーの管理はGoogleが行ってくれます。そのため利用する側は、面倒な機器の準備や保守をほとんど気にせず使えます。
「業務システムを作るなら、専用のデータベースサーバーが必要」と思われがちですが、当社の規模であれば、このFirestoreで必要十分でした。データベースサーバーを自前で構築・保守する必要がなくなり、運用の負担を大きく減らせます。中小企業の内製にこそ向いた構成だと感じています。
アプリの実行環境はCloud Runで
Cloud Runとは? こちらもGoogleのサービスで、作ったアプリ(プログラム)をクラウド上で動かすための“実行の場所”です。アクセスがあったときだけ自動で立ち上がり、使われていないときは休んでいるため、24時間サーバーを動かしっぱなしにする必要がありません。
アプリケーション本体は、このCloud Run上で稼働させています。アクセスがあるときだけ起動するサーバーレス構成なので、待機コストが発生しません。「使った分だけ」という考え方が、小規模運用と非常に相性が良い点です。
セキュリティ|IAP × Googleアカウントで安全に
社内の見積もり情報を扱う以上、セキュリティは外せないポイントです。当社では Cloud RunのIAP(Identity-Aware Proxy) を利用しています。
システムへのアクセスにはGoogleアカウントによるログインが必須となり、許可されたメンバーだけが利用できる状態を実現。複雑な認証機能を自前で作り込む必要がなく、Googleの堅牢な仕組みにセキュリティを任せられる点が大きなメリットです。追加の認証システムを開発・保守する手間がないため、内製との相性も抜群でした。
導入効果|「どこでも・すぐに・逃さず」
自社システムへ移行したことで、次のような効果が得られました。
- どこからでも作成・確認できる — 外出先や訪問先からでも、見積もりの状況確認・見直し・新規作成が可能になりました。
- 見積もり書を全文検索できる — 見積もりの中身までまるごと検索できるため、「以前、似た案件でいくらで出したか」といった過去案件も、キーワード一つですぐに参照できます。複数のファイルを横断的に探し回る手間から解放されました。
- その場でPDFをダウンロード — 作成した見積もり書は、システム上からすぐにPDF形式でダウンロード可能。そのままお客様へ送付できます。
- 概算・超概算にも対応 — きっちりした正式見積もりだけでなく、「概算」「超概算」といったざっくりした見積もりも選べます。初期相談の段階でも、スピーディに金額感をお伝えできるようになりました。
- 過去の見積もりも一元管理 — ずいぶん前に提出した見積もりもすべてシステム上で管理でき、「その後いかがでしたか?」といったリマインドの連絡も簡単に行えるようになりました。
- ステータスが一目でわかる — 回答待ち・失注・受注の状況を統合的に把握できるようになり、フォローの抜け漏れが減りました。
散らばっていた情報が一か所に集約されたことで、見積もり業務そのもののスピードと精度が確実に上がっています。
費用|Google Cloudの無料枠で“0円運用”
気になるランニングコストですが、当社の利用規模では Google Cloudの無料枠に完全に収まっており、月額0円で運用できています。
先ほど触れたクラウド型の販売管理アプリのように毎月のサブスク費用が積み上がっていくこともなく、追加のランニングコストがかからない点も、内製ならではの大きな強みです。
「業務システムを内製すると高くつくのでは?」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、規模と構成をきちんと見極めれば、ここまでコストを抑えることは十分に可能です。身の丈に合った技術選定こそが、コストを抑える最大のポイントだと考えています。
【おまけ】AIエージェントに“声かけ”するだけで、見積もりが完成する
ここからは少し先進的な取り組みのご紹介です。
この見積もり管理システムは、API経由で外部とデータのやり取りができるように設計しています。この仕組みを活かして、AIエージェントとの連携を実現しました。
具体的には、AIエージェントに——
「○○株式会社に、△△の内容で、□円で概算見積もりを作って」
——とお願いするだけで、システムへのデータ登録から、PDFの見積もり書の作成までを自動で行ってくれます。
さらにこのエージェントは、最新のAIエージェント「HermesAgent」で動作しています。スマホアプリ(Discord)から、まるで秘書に頼むように声をかけるだけで見積もりが作成できるので、移動中や外出先でも、チャットで一言お願いするだけで完了します。
しかも、指示が足りないときには「これは概算でよろしいですか?」といった具合にAIのほうから確認してくれるため、行き違いによる作り直しの手間も減ります。
「業務システム × AIエージェント」で、“お願いすれば形になる”——中小企業の現場でも、こうした一歩先の効率化が、すでに現実のものになりつつあります。
同じ課題をお持ちの中小企業さまへ
今回ご紹介したのは、当社が「自分たちの困りごと」を解決するために、実際に手を動かして作り、今も毎日使っているシステムです。だからこそ、良い点も難しい点も、現場の目線でお伝えできます。
- エクセルやスプレッドシートでの見積もり管理に限界を感じている
- 市販の販売管理ソフトが、自社の使い方に今ひとつ合わない
- クラウドサービスのサブスク費用や、情報を外部に預けることが気になる
- 大げさな仕組みではなく、自社に“ちょうどいい”システムが欲しい
- AIエージェントを活用して、日々の業務そのものを自動化してみたい
——そんな中小企業さまのお手伝いこそ、当社の得意分野です。
岐阜県関市を拠点に、ITサポート・WEB制作・WEBマーケティングまで、中小企業の「味方」として伴走します。今回のような業務システムの内製・開発についても、お気軽にご相談ください。まずは「うちの場合はどうなる?」というご相談だけでも大歓迎です。