HOME/ WORKS / 【事例】「利益が見えない」アパレルECの課題を解決。現場に負担をかけず実現した意思決定のための管理会計DX

DXシステム開発

【事例】「利益が見えない」アパレルECの課題を解決。現場に負担をかけず実現した意思決定のための管理会計DX

DATE
2025.10
KEYWORD
スプレッドシート、管理会計、経理
【事例】「利益が見えない」アパレルECの課題を解決。現場に負担をかけず実現した意思決定のための管理会計DX

アパレル業界において、ECサイト(自社ショップや大型ショッピングモール)での販売は今や欠かせない主力チャネルです。しかし、EC事業が成長する一方で、バックオフィス——特に「会計・経理の仕組み」が事業のスピードに追いつかず、経営の舵取りに悩む企業様は少なくありません。

今回は、期中の売上を「現金主義」で処理していたことから、本当の損益が捉えられなくなっていたアパレルEC企業様の改善事例をご紹介します。

専門職の立場や既存のオペレーションを尊重しながら、いかにして「経営判断に使えるリアルタイムな数値」を手に入れたのか。そのプロセスと工夫をお伝えします。

【課題】現金主義が生んだ「本当の利益が見えない」試算表

こちらの会社様では、日々の仕訳や期中の会計処理を、お金が動いたタイミングで記録する「現金主義」に近い形で行っていました。

しかし、EC販売においては「商品を出荷した日」と「モールや決済会社からお金が入金される日」にタイムラグが生じます。

  • 入金サイクルのズレ: モールや決済方法(クレジットカード、後払いなど)によって、売上が入金される月が「出荷月」とズレてしまう。
  • 費用の相殺処理: モールへのロイヤリティや振込手数料、配送費などが、入金額から差し引かれた状態で「入金月」に計上される。

この結果、何が起きていたのでしょうか。

ある月は出荷が非常に多くて多忙を極めたにもかかわらず、会計上の売上は低く表示され、逆に翌月に入金がまとめて入ると一気に売上とロイヤリティ費用が跳ね上がる、といった「収益と費用の期(月)の不一致」が常態化していたのです。

経営陣が月次の試算表を開いても、次のような状態に陥っていました。

  • 「今月、結局いくら利益が出ているのか分からない」
  • 「投入したWeb広告の費用対効果(ROAS等)が正しく検証できない」
  • 「次のシーズンに向けた仕入れや投資の判断が、根拠を持ってできない」

事業は動いているものの、経営の「コックピットの計器」が狂っているような焦りを感じられていたのです。

【提案と壁】理想の「発生主義」への移行。しかし立ちはだかる現場の壁

この状況に危機感を覚え、私たちは「売上を出荷基準(実現主義)で捉え、その売上を得るためにかかった費用も同じ月に対応させる(発生主義・費用収益対応の原則)」という、本来あるべき会計処理への変更をご提案しました。

社長ご自身もこの課題を痛感されており、「ぜひその形にしたい」と心から望まれていたため、プロジェクトはスムーズに進むかに思われました。

しかし、ここで一つの大きな「壁」に突き当たります。経理担当者様からの難色でした。

EC特有の経理業務には、以下のような複雑な要素が絡み合っています。

  • ポイント利用やクーポンの値引き処理
  • お客様からの返品・交換対応
  • 配送料の確定タイミングのズレ

経理担当者様としては、従来の財務会計システムの中で見越し計上(概算での計上)を組み込むと、決算や税務申告に向けた正確な仕訳と照合する作業が煩雑化し、「今の体制や仕組みではどうしても変更できない」という回答だったのです。

無理なトップダウンがもたらすリスク

小規模な企業様においては、経理をはじめとする専門スタッフが強い責任感と発言権を持っていることが珍しくありません。社長が「こうしてほしい」と指示しても、現場の業務が回らなくなってしまっては元も子もありません。

このような場面で、社長の権限を使って無理やりトップダウンでやり方を変えさせようとすると、担当者のモチベーション低下や人間関係の摩擦を引き起こしてしまいます。

人の心は単純なものではなく、合理的な正論だけで現場を動かすことはできません。そこで私たちは、「既存の経理(財務会計)には手をつけず、経営判断のための仕組み(管理会計)を外側に作る」というアプローチを取ることにしました。

【結果】スプレッドシート+GASで作る「意思決定のための管理会計」

解決策として採用したのは、税務申告や決算のための「財務会計」と、日々の経営判断のための「管理会計」を明確に切り分ける方法です。

経理担当者様には従来通りのルールで確定数値を入力してもらいつつ、その試算表データをベースにして、別ルートで「発生主義・実現主義」に修正する仕組みを構築しました。

【従来の財務会計】
入金ベースの処理(そのまま継続・税務用)
  ↓
【今回の管理会計ツール】
スプレッドシート + Google Apps Script (GAS)
 ・出荷データから売上期を補正
  ・確定前費用を過去平均等から「みなし計上」
  ・費用収益を同月内で正しく対応
  ↓
【経営判断】
リアルタイムな損益・投資判断が可能に!

シンプルなツールで「速さ」を優先

大がかりで高額なクラウドIaaSや専用の管理会計システムを導入する必要はありませんでした。使用したのは「Google スプレッドシート」と「Google Apps Script(GAS)」のみです。

  1. 期のズレの自動修正: 出荷データやモールごとの売上データをCSV等で取り込み、GASによって「出荷月の売上」として自動再集計します。
  2. 未確定経費の「みなし計算」: ECでは月が明けてもしばらく確定しない費用(配送費の確定請求など)が多く存在します。これらは過去の平均値や標準的な比率を用いた「みなし数値」で概算計上するルールにしました。

もちろん、みなし計算が含まれるため、1円単位の厳密な確定数値ではありません。しかし、経営の意思決定において重要なのは「1円の正確さ」よりも「今、8割〜9割の精度で素早く傾向を把握できること」です。

導入後に得られた変化

この「スプレッドシート+GAS」による管理会計の導入により、以下のような成果が得られました。

  • リアルタイムな損益把握: その月の出荷実績に基づいた「本当の粗利・営業利益」が月次ですぐに見えるようになりました。
  • 広告費の正当な評価: 売上と広告費の期が揃ったことで、プロモーションの成否が客観的に判断できるようになりました。
  • 現場と経営の調和: 経理担当者様は従来の正確な実務を崩すことなく、経営陣は欲しいタイミングで経営データを得られるという「全員が納得できる環境」が整いました。

社長からも「意思決定のスピードが格段に上がり、打った施策に対する結果の感触がリアルタイムに手応えとして残るようになった」と、お喜びの声をいただいています。

まとめ:現場に寄り添うアプローチが、本当の会計DXを成功させる

今回の事例を通じて改めて感じたのは、バックオフィスの改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める際、「正論を押し付けるのではなく、現場のやり方や感情に寄り添うことの大切さ」です。

理想的な会計理論を追求するあまり、現場の経理担当者に過度な負担を強いてしまっては、仕組み自体が頓挫してしまいます。財務会計と管理会計を上手に使い分け、身近なツールを組み合わせるだけでも、経営に必要な数値は十分に手に入ります。

当社の強みとサポート体制 当社では、税理士試験の科目合格者であり、実際の現場で経理実務を豊富に経験してきた代表自らがご相談を承っております。

単なる理論上のアドバイスにとどまらず、現場の業務フローやスタッフの方々の想いに配慮しながら、GoogleスプレッドシートやGAS、クラウドツール等を活用した「実効性の高い会計DX・高度化」を得意としています。

「試算表を見ても経営判断に使えない」「現場と意見が合わず改善が進まない」とお悩みの企業様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

WORKS一覧に戻る

CONTACT

DX、WEB集客、WEB制作、
ECコンサルティング等
お気軽にお問い合わせください。

CONTACT FORM

お電話でも受け付けています
050-6866-0373