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DXが進まない組織は「トップが変わらない」からかもしれません──経営者の皆さまが今すぐ検討すべき3つのポイント

最終更新日:2026.06.30

DXの成否を分ける「組織の壁」とは

「DXをやらなければ」──そうお考えの経営者の方は少なくないのではないでしょうか。しかし、経済産業省のDXレポートによると、DXが計画通りに進んでいると回答した企業はわずか2割。DX投資の約7割が「効果を実感できない」まま、途中で止まってしまっているというデータもあります。

その原因は「技術が足りないから」ではないようです。経営層のコミットメント(関与・責任)が不足していることこそが、最大の妨げになっていると考えられます。McKinseyの調査でも、トップ経営層がDXを直接リードした企業の成功率は約80%に達する一方、IT部門に丸投げしたケースでは成功率が20%を切っています。

つまり、DXの成否はテクノロジーの選び方よりも、トップが組織とどう向き合うかで決まるということなのです。

なぜ「現場任せ(ボトムアップ)」だけではうまくいかないのでしょうか

現場から上がってくる改善提案はとても大切です。しかし、現場主導のデジタル化には、どうしても限界があります。

例えば、自分の部署だけの最適化に終始してしまい、組織全体をまたぐ改革には踏み込みにくいものです。予算の権限も人事の権限もない現場のリーダーには、会社全体の仕組みを変えることはなかなかできません。結果として、部署ごとにバラバラなツールが導入され、むしろ情報のサイロ化(部署間でデータが分断される状態)が進んでしまう──そんなケースは珍しくないのではないでしょうか。

DXに必要なのは「部門を横断する意思決定」です。これはトップダウンでなければ実現が難しいものです。

「推進する組織がない」「役割がはっきりしない」のが最大の壁

CDO(最高デジタル責任者)を設置している企業は、まだ全体の1割程度にとどまっています。推進する担当者がいない、いたとしても権限が与えられていない、あるいは兼務のために十分な時間を割けない──これが日本の中小・中堅企業の実態ではないでしょうか。

DXを進めるにあたって「誰が」「どの権限で」「どれだけのリソースを」取り組むのか。この3つがはっきりと決められていない組織は、どれだけ便利な技術を導入しても、なかなか前に進まないものなのです。


【ポイント1】トップが「DXは経営課題だ」と宣言する

最初のポイントはとてもシンプルです。

経営者ご自身の言葉で「DXは経営課題である」と宣言すること。IT部門だけの仕事ではなく、経営の最優先事項のひとつだと、社内外にはっきり示す。この宣言なしには、組織はなかなか動きません。

「DX推進宣言」に必要な4つの要素

とはいえ「DXやるぞ」と声を上げるだけでは、誰も動いてくれません。現場が動くためには、次の4つがきちんと文章になっている必要があります。

  1. ビジョン:何のためにDXを進めるのか(売上を拡大するためなのか、業務を効率化するためなのか、新しい事業を生み出すためなのか)
  2. 数値目標:3年後・5年後のデジタルの成熟度合いを、具体的な指標で示す
  3. 投資額:年間予算の何%をDXに振り向けるのか、明確なコミットメントを示す
  4. 組織体制:誰が、どのような権限で推進するのかを決める

経営会議でDXを定例の議題として扱うだけでも、組織の温度は変わってくるものです。毎月DXの進み具合をレビューする仕組みを作れば、「やらなければならない」という空気が自然とできあがっていきます。

経営層に求められる「3つのコミットメント」

具体的な行動としては、トップ経営層に3つのコミットメント(約束・責任)が求められます。

① 時間のコミットメント CEOご自身が毎月◯時間をDX関連のミーティングや現場視察に充てる。スケジュールにあらかじめ「ブロック」しておくことで、優先順位の高さを社内に示すことができます。

② 予算のコミットメント DX予算を「削ってもよい予算」から外すことです。景気の変動で真っ先に削られるコスト部門としてではなく、成長のための投資として位置づけることが大切です。

③ 人事のコミットメント デジタル人材の評価の基準を変える。従来の年功序列や職能評価のままでは、DXを引っ張っていく人材は育ちにくいものです。デジタルスキルの習得や新しいプロジェクトへの参加を、昇格の条件に組み込んでみてはいかがでしょうか。


【ポイント2】推進組織を「縦割り(線)」ではなく「横断(面)」で設計する

多くの企業が「DX推進チーム」を作ります。しかし、これが「誰かの兼務」で成り立っている限り、推進力はなかなか生まれません。必要なのは常設の推進組織であり、全社を横断する権限を持つことです。

従来の縦割り組織(線)ではなく、部門の壁を越えた「面」の組織設計が求められているのです。

おすすめの組織の形──「DX推進本部+CDO」の2層構造

中小・中堅企業に最も現実的と考えられるのは、次の2層構造です。

CDO(CEO直轄) 全社を横断する権限を持ち、DX戦略の全体責任者となります。「推進する役割」ではなく「決定権を持つ責任者」として位置づけることがポイントです。

DX推進本部 CDOを支える実際に動く部隊です。事業部門・IT部門・経営企画からの兼務メンバーと、専任メンバーを組み合わせます。ミッションは「戦略づくり」「実行の支援」「人材の育成」の3つです。

トップダウンとボトムアップ、うまいバランスの取り方

「トップダウンか、ボトムアップか」という二択で考えるのは、あまり生産的ではありません。実際のDX推進には、両方を場面に応じて使い分けるハイブリッドな方法が効果的です。

領域 トップダウン ボトムアップ(現場任せ)
全社で共通に使う基盤(基幹システム、データの土台) とても有効 あまり向かない
現場の業務改善やデジタル化 あまり向かない とても有効
ガバナンスのルールやセキュリティの方針 とても有効 あまり向かない
新しい事業や実験的な取り組み どちらも有効 どちらも有効

また、両者をつなぐ「コミュニティ型」の運営も効果的です。定期的な情報交換会やノウハウ共有の場を設けることで、組織を超えた学びの循環が生まれてきます。

中小企業に最適な「ミニマムな組織」の提案

「CDOなんて置けるわけがない」──そうお考えの経営者の方も多いでしょう。しかし、中小企業には中小企業なりのやり方があります。

おすすめのミニマムな構成例:3〜5名の推進チーム

  • CEOの直轄とし、経営企画の担当者が統括する
  • IT部門から1〜2名、営業や製造など現場から各1名が兼務で参加する
  • 外部のDXコンサルタントやITベンダーを伴走者として契約する
  • 半年ごとに体制を見直し、成果に応じて専任化へ移行する

スモールスタートから組織を広げていくロードマップ

フェーズ 期間 体制 テーマ
フェーズ1 0〜3ヶ月 兼務3名+外部支援 現状診断・戦略づくり
フェーズ2 3〜12ヶ月 兼務+専任1名 パイロットプロジェクトを実行
フェーズ3 1〜2年 専任チーム 全社に広げる・体制を強化
フェーズ4 2〜3年 CDO+推進本部 本格定着・さらに高度化

【ポイント3】評価とお金の配分の仕組みを変える

「口ではDXと言うけれど、評価の仕組みは従来のまま」──これが多くの企業でDXの足を引っ張っている最大の矛盾かもしれません。

推進する人材のためのインセンティブ設計

DXを推進する人材に求められるのは、新しいことを学び、試し、時には失敗する勇気です。しかし、このような行動を従来の業績評価で測ろうとすると、ほとんどが「評価できない」という判定になってしまいます。

解決策としては、次の3つが考えられます。

  1. DX関連のスキルを身につけることを昇格の条件に含める(デジタルリテラシーを全社の基準にする)
  2. プロジェクトの成果に連動した報酬制度を導入する(成功報酬だけでなく、挑戦したこと自体を評価する仕組み)
  3. 社内公募の制度でデジタル人材を募る(やりたい人が自ら手を挙げられる環境をつくる)

「守りのDX」から「攻めのDX」へのシフト

予算の配分の仕方も変えていく必要があります。多くの企業のDX投資は、今ある業務の効率化(いわゆる「守りのDX」)に偏っていませんか。そこから一歩進んで、新しいお客さまの獲得やビジネスモデルの変革につながる「攻めのDX」へ、予算をシフトしていくことが大切です。

投資の効果(ROI)の正しい測り方

DXのROI(投資対効果)は、単年度だけで測るものではありません。次の3つの時間軸で評価するのが正しい考え方です。

  • 短期(6ヶ月〜1年):業務効率化による工数削減──まずは「見える化」から始める
  • 中期(1〜3年):新しいお客さまの獲得や、既存のお客さまのLTV(顧客生涯価値)の向上
  • 長期(3〜5年):ビジネスモデルの変革や、競争上の優位性の確立

経営層がこの時間軸を理解せず、半年や1年で「効果が出ていない」と判断してしまうのが、DXが途中で止まってしまう最大の原因のひとつかもしれません。


成功するDX組織の3つの条件

最後に、実際にDXを成功させている組織に共通する3つの条件を整理してみました。

条件1──経営トップが「変化を引っ張るリーダー」になる

最も重要なのは、経営トップが単なる「承認する人」ではなく「変革を牽引する人」になることです。予算を承認するだけのCEOと、自ら現場に出向いてデジタル活用のビジョンを語るCEOとでは、組織のスピードが根本的に違ってきます。

失敗を恐れない姿勢も欠かせません。リクルートの「Full-Spread」や、ワークマンのデジタルシフトの例に見られるように、トップ自らが「失敗してもいいからやってみよう」という文化をつくることで、現場の挑戦が加速していくのです。

条件2──「任せる権限」と「伴走する仕組み」の両立

DX推進の組織に権限を委ねることは必須ですが、丸投げは禁物です。「ここまでは任せる、ここからは経営判断」という線引きをはっきりさせた上で、定期的に経営レビューを開催することをおすすめします。

特に効果的なのは月に1回のDX戦略のレビューです。CEO・CDO・各事業部長が集まって、進み具合の確認と軌道修正を30分で行う。これだけで、推進する側も経営側も「自分ごと」としてDXに関わり続けることができるようになります。

条件3──社外の力もうまく活用する

すべてを自社だけでやろうとしないこと。これが意外と大切だったりします。

DXの分野はとても広く、すべての分野で社内の人材をそろえるのは現実的ではありません。スタートアップとの協業や、外部サービスのAPI(機能連携)の活用、業界団体やコミュニティを通じた知見の獲得など、オープンイノベーションの姿勢が長い目で見ると競争上の強みにつながっていくでしょう。


まとめ:今日から始められる3つのステップ

「わかったけれど、何から始めればいいのでしょうか」──そうお考えの経営者の方のために、今日から始められる3つのステップをご用意しました。

ステップ1:自社のDXの成熟度を診断してみる まずは現状を知ることから始まります。経済産業省やIPAが提供しているDX診断ツールを活用して、自社のデジタルの成熟度合いを可視化してみてはいかがでしょうか。現状の分析なしに、良い戦略は立てられません。

ステップ2:経営会議で「DX推進の組織づくり」を議題にする 次回の経営会議で、この1点だけはぜひ議題に挙げてみてください。「自社のDX推進体制はどうあるべきか」──これを議論するだけで、組織の中の空気は確実に変わっていくはずです。

ステップ3:まずは小さく始めて、結果を目に見える形にする 3ヶ月で完了するパイロットプロジェクトを1つ選び、実行してみましょう。「やってみせて、結果を出す」。この小さな成功体験が、次の組織変革の原動力になっていきます。

DXは壮大なプロジェクトではありません。経営者の皆さまの覚悟と、たった3つのポイントから始まるのではないでしょうか。

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