「そろそろDXをやらないとまずい」
岐阜県内で経営をされている方から、この言葉を聞く機会が本当に増えました。商工会議所のセミナーで聞いた、取引先の大手から electronic データでの納品を求められた、若手社員に「まだ紙でやってるんですか」と言われた——きっかけはさまざまです。
一方で、こういう声もよく聞きます。
「DXコンサルに相談したら、いきなり数百万円の見積もりが出てきた」
「何を言っているのか半分も理解できなかった」
「結局、高いシステムを買わされて誰も使っていない」
この記事では、岐阜県で中小企業のDX支援をしている立場から、DXコンサルに何を期待していいのか、費用はいくらが妥当なのか、どう選べば失敗しないのかを、できるだけ具体的に書きます。
売り込みではなく、「うちには要らない」と判断できる材料も含めてお伝えします。
岐阜県の中小企業がDXでつまずく3つの理由
全国共通の話ではなく、岐阜という地域特有の事情があります。
理由1:頼れるIT人材が社内にも近所にもいない
岐阜県内、特に関市・美濃市・郡上市といった中濃エリアでは、IT人材の絶対数が限られています。
採用しようにも母集団が形成できず、名古屋や東京の企業に流れてしまう。
結果、「パソコンに少し詳しい総務の人」が事実上の情報システム担当を兼務している——という会社が非常に多いのが実情です。
この状態で新しいツールを導入すると、その人に負荷が集中して破綻します。DXが進まない原因は、意欲でも予算でもなく、推進する人の空席であることがほとんどです。
理由2:業務が「人に付いている」
創業から数十年、同じ方が同じ業務を担ってきた会社では、手順が文書化されていません。刃物、機械金属、建設、運送といった岐阜の基幹産業ではとりわけ顕著という印象です。
DXの本質は業務プロセスの再設計なので、まず「今どうやっているか」を可視化する必要があります。ところがそれを説明できる人が1人しかおらず、その人が最も忙しい。ここで止まります。
理由3:情報が「補助金」に偏っている
岐阜県はDX支援に力を入れている自治体で、相談窓口も補助金も充実しています。
これは大きなメリットです。ただ、情報を集めていくと制度の話ばかりが手元に集まり、「で、うちは何をすればいいのか」が一向に定まらないという状態に陥りがちです。
補助金は手段であって目的ではありません。
「補助金が取れる取り組み」から逆算して事業を考え始めると、たいてい使われないシステムができあがります。
そもそもDXコンサルは何をする人なのか
ここに大きな誤解があります。整理しておきます。
DXコンサルがやること
- 現状の業務を洗い出し、どこに無駄があるかを特定する
- どの業務をデジタル化すれば効果が大きいか、優先順位をつける
- ツールやシステムの選定と、その根拠の説明
- 導入後、社員が実際に使えるようになるまでの伴走
- 補助金が使えるならその申請支援
DXコンサルがやらないこと(たまに期待されているが)
- 魔法のように会社を生まれ変わらせること
- 経営者が決めるべき方針を代わりに決めること
- 現場の反対を無条件に押し切ること
- 経営者の代わりに社内をまとめること
DXは外注できますが、DXをやる意思決定や、社内への決断・通達は外注できません。 ここが噛み合っていないと、どんなに優秀なコンサルを入れても失敗します。
「コンサル」と「実装」は別物という落とし穴
もう一つ、中小企業にとって決定的に重要な点があります。
大手のDXコンサルティングは、多くの場合戦略の立案までが業務範囲です。分厚い提案書が納品されて契約終了。実際にシステムを作るのは別会社、という構造になっています。
従業員が数名〜数十名規模の会社にとって、これは非常に相性が悪いです。
戦略と実装が分かれた瞬間に、間の調整をする人が社内に必要になり、そこにまた人がいないからです。
中小企業がDXコンサルを選ぶときは、提案だけでなく実際に手を動かせるかを必ず確認してください。
岐阜県の中小企業が使える支援制度
自社で判断がつかない段階では、まず公的な窓口に相談するのが合理的です。無料ですし、特定の製品を売り込まれることもありません。
ぎふDX支援センター
岐阜県がDX推進に関する各種相談をワンストップで受け付ける窓口として設置しているものです。
DXに精通した「ぎふDXアドバイザー」や県職員による支援チームが置かれ、専門性の高い相談については民間IT企業などの「ぎふDXサポーター」とも連携して対応する体制になっています。
「何から始めればいいか分からない」という段階の相談先として適しています。
岐阜県DX推進コンソーシアム
産学官が連携し、県内企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する組織です。ソフトピアジャパンが事務局を務めており、製造業向けのAI活用カンファレンスや外観検査のワークショップなど、実務寄りのイベントが継続的に開催されています。同業他社が何をしているかを知る場としても有用です。
関市ビジネスサポートセンター(通称:セキビズ)
セキビズは当社の代表(後藤)も専門家として相談を受け付ける中小企業の総合的なビジネスコンサル機関です。
料金は無料で、何度でも相談を受けることができます。
まずはざっくりとした課題や方向性を相談すると良いと思います。
補助金・助成制度
岐阜県では地域DX推進のための補助金が用意されているほか、国のIT導入補助金、ものづくり補助金なども中小企業のデジタル化に活用できます。
※補助金は年度ごとに要件・金額・公募時期が変わります。必ず岐阜県公式サイトおよび各補助金の公募要領で最新情報をご確認ください。 本記事の情報は執筆時点のものです。
補助金についての正直な意見
補助金ありきで動くと失敗します。おすすめの順番は
「①課題を特定する → ②解決策を決める → ③それに使える補助金があれば申請する」です。③から入らないでください。
大手コンサルと地域のDXコンサル、どちらを選ぶべきか
どちらが優れているという話ではなく、会社の規模と課題によって適切な相手が変わります。
| 大手コンサルティング会社 | 地域密着のDXコンサル | |
|---|---|---|
| 費用感 | 月100万円〜/プロジェクト数千万円 | 月5万円〜30万円/単発数万円〜 |
| 得意領域 | 全社的な事業構造の変革、大規模システム刷新 | 現場業務の効率化、部分最適の積み上げ |
| 実装 | 別会社に委託されることが多い | 自社で対応するケースが多い |
| 担当者 | 若手が実務、責任者は別 | 提案者本人が最後まで担当 |
| 距離 | 常駐またはオンライン中心 | 訪問しやすく、現場を直接見られる |
| 相性が良い企業規模 | 従業員300名以上 | 従業員数名〜100名程度 |
従業員数名〜50名程度の会社が大手に頼むと、費用対効果が合わないだけでなく、そもそも提案の粒度が合いません。「事業ポートフォリオの再構築」を提案されても困る、というのが本音でしょう。
逆に、複数拠点を持ち基幹システムを刷新するような案件なら、地域の小規模事業者では受けきれません。ここは正直にお伝えします。
ちなみに当社も、大規模なシステム構築などはお断りをさせていただいております。
DXコンサルの費用相場
不透明になりがちな部分なので、目安を書きます。
単発の相談・診断
数5万円〜30万円
現状をヒアリングし、課題の整理と優先順位づけをして報告書にまとめる形。まず何をすべきか知りたい段階に適しています。無料相談を設けている事業者も多いので、いきなり有料契約する必要はありません。
月額の顧問・伴走支援
月5万円〜30万円
月1〜2回の定例で進捗を確認し、疑問に答え、次の一手を決めていく形。中小企業のDXは半年〜数年かかるので、実際にはこの形が最も多くなります。
システム・ツールの導入実装
10万円〜300万円
規模により大きく変動します。クラウドツールの設定・移行だけなら数十万円、業務システムを新規開発するなら数百万円。
補助金申請の支援
着手金5〜15万円+成功報酬10〜15% が一般的な相場です。
費用を判断するときの視点
金額の絶対値ではなく、削減できる人件費と比較してください。
たとえば、月20時間の手作業がなくなるなら、時給2,000円換算で月4万円、年間48万円の効果です。これに対して初期費用60万円なら、1年半で回収できる計算になります。
この試算を出してくれないコンサルは避けたほうが無難です。
ただし、最近は「費用対効果が合わなくても、新規スタッフの求人が困難なため、まずは業務量自体が減らせれば投資する」というケースも実感で増えてきている感覚があります。
その場合も考え、費用対効果軸だけでない提案をすることもあります。
失敗しないDXコンサルの選び方 7つのチェックポイント
1. 実際に手を動かせるか
提案書だけを作る会社か、システムの設定や開発まで自社でやる会社か。中小企業には後者が向いています。
2. 効果を数字で説明できるか
「業務が効率化します」ではなく「この作業が月◯時間減ります」と言えるか。
3. 「やらなくていいこと」を言ってくれるか
すべての提案に前向きなコンサルは危険です。予算と体力を考えて「今回は見送りましょう」と言える相手を選んでください。
4. 現場を見に来るか
オンラインだけで完結する提案は、中小企業の現場実態を捉えきれません。訪問できる距離にいることは、地域のコンサルを選ぶ最大の理由です。
5. 特定製品の代理店ではないか
特定ベンダーの販売代理を主業務にしている場合、提案が最初からその製品ありきになります。代理店であること自体は悪くありませんが、必ず開示してもらってください。
6. 契約終了後に自走できる形にしてくれるか
永久に依存させるのではなく、社内で運用できる状態を目指してくれるか。マニュアル整備や社内担当者の育成を提案に含んでいるかが判断材料になります。
7. 同規模・同業種の実績があるか
大企業の実績が並んでいても、中小企業のDXとは別物です。
従業員数が近い会社の事例を見せてもらいましょう。
中小企業のDX、進め方の4ステップ
「何から始めるか」への回答です。
ステップ1:時間の使い方を可視化する(1〜2ヶ月)
いきなりツールを探さないでください。まず、社内の誰がどの業務に何時間使っているかを洗い出します。
紙とExcel・スプレッドシートで十分です。1週間、主要メンバーに業務日誌をつけてもらうだけでも、驚くほど無駄が見えます。「これ、何のためにやってるんだっけ?」という作業が必ず出てきます。
ステップ2:やめる・減らす業務を決める(1ヶ月)
デジタル化の前に、廃止できる業務を廃止します。使われていない報告書、二重入力、形骸化した承認フロー。
無駄な業務をデジタル化すると、無駄が高速化するだけです。 ここを飛ばす会社が非常に多い。
ステップ3:効果が大きく、抵抗が小さいところから着手する(3〜6ヶ月)
最初の一手は、**「効果が見えやすく」「反対が出にくい」**業務を選びます。
具体的には、請求書発行、日報・勤怠管理、在庫の記録、見積書作成あたりが定番です。基幹システムの刷新のような大きな話は、小さな成功を積んでからにしてください。
最初のプロジェクトが成功すると、社内の空気が変わります。逆に最初でつまずくと「やっぱりうちには無理」という空気が数年残ります。最初の一手の選定が全体の成否を分けます。
ステップ4:社内に運用できる人を育てる(継続)
外部に頼りきりの状態は健全ではありません。ツールの設定変更やちょっとした改修を社内でできるようにしておくと、長期的なコストが大きく下がります。
岐阜県内での支援事例
※守秘義務のため、業種と規模のみ記載しています。
建設業(従業員10名台・岐阜県中濃エリア)
現場写真の管理と見積書作成が属人化し、社長個人の負荷が限界に達していた状態からのスタート。現状業務のヒアリングを行い、既存のクラウドツールの組み合わせで対応できる範囲と、独自に作るべき範囲を切り分けて提案しました。高額なパッケージを導入せず、まず運用が回る形を優先しています。
医療機関(岐阜県中濃エリア)
採用難への対応として、採用サイトの構築だけでなく、応募者が情報に触れてから応募に至るまでの流れ(カスタマージャーニー)を整理するところから着手。「サイトを作れば人が来る」という前提を一度崩し、どの段階で候補者が離脱しているかを可視化した上で施策を組み立てました。
小売・EC(岐阜県中濃エリア)
地場産品のオンライン販売において、商品登録作業の自動化と、在庫・受注データの一元管理を実施。手作業だった登録・更新作業を大幅に削減しました。
よくある質問
Q. 社員が高齢で、ITに抵抗があります。それでもDXは可能ですか。
可能です。むしろ、そういう会社ほど「操作を覚えてもらう量」を最小化する設計が重要になります。
全社員に新しいツールを覚えさせるのではなく、入力する人を限定し、他の人は結果を見るだけ、という形にできることも多いです。抵抗を押し切るのではなく、抵抗が起きない設計にするのがコンサルの仕事です。
Q. まだ何も決まっていない段階で相談してもいいですか。
その段階での相談がむしろ適切です。ツールを決めてから相談されると、「その選定自体を見直しましょう」という話になりがちで、手戻りが大きくなります。
Q. どれくらいの期間がかかりますか。
最初の1つの業務を改善するまでで3〜6ヶ月、会社全体として形が見えてくるまでで1〜3年が一般的です。数ヶ月ですべてが変わることはありません。
Q. 補助金は必ず取れますか。
取れません。
採択率は制度と年度によって大きく変動します。「必ず取れます」と言う事業者は疑ってください。補助金が取れなくても実行する価値のある計画かどうかで判断すべきです。
Q. 関市以外でも対応してもらえますか。
岐阜県内であれば訪問対応が可能です。県外についてはオンラインを中心とした対応となります。
まとめ:岐阜の中小企業にとってのDXは「小さく始める」が正解
長く書きましたが、要点は3つです。
- DXは大改革ではなく、業務の無駄を一つずつ潰す作業の積み重ねです。最初から大きなものを狙わないでください。
- 補助金からではなく、課題から入ること。順番を逆にすると使われないシステムが残ります。
- 提案と実装が分かれていない相手を選ぶこと。中小企業には、間をつなぐ人的余裕がありません。
そして最も重要なのは、まず現状を言語化することです。それだけなら、外部に頼まなくても今日から始められます。
相談してみる
CELLECは岐阜県関市を拠点に、中小企業の業務効率化・Web制作・システム開発を一貫して行っています。代表自身がエンジニアとして最後まで実装を担当するため、提案と実装が分断されることがありません。
「何から手をつけるべきか」の整理だけでも構いません。まずは現状をお聞かせください。初回のご相談は無料です。